「取扱表示」は衣類の取扱いに関する情報を伝える記号で、家庭洗濯における「洗濯、漂白、乾燥、アイロン仕上げ」に加え、商業クリーニングの「ドライクリーニング、ウエットクリーニングの可否」がひと目で理解できるような図柄で、衣類に必ず表示されています。

 この表示の詳細は家庭用品品質表示法に基づき、JISの規定を引用して繊維製品品質表示規程(平成29 年消費者庁告示第4 号)に定められています。

    JISでは「この規格は、家庭洗濯(洗濯,漂白,乾燥及びアイロン仕上げ)及びドライクリーニング並びにウエットクリーニング(以下,商業クリーニングという。)による繊維製品のケア(取扱方法)に関する表示記号及び表示方法について規定する。」としています。

ワイシャツなどを対象としたランドリーはこの規格の適用外になっています。

 衣類の取扱表示に対して、商業クリーニングはどのように対応しているのでしょうか?

 最新の取扱表示の考え方

 以前の取扱表示(JIS L 0001-2014以前)では、「~するのが良い」という意味を持つ「取扱い方の指示」を表していました。

  JIS L 0001:2014では「この規格は,繊維製品のケアの表示に使用すること、繊維製品の洗濯などの取扱いを行う間に回復不可能な損傷を起こさない最も厳しい処理・操作に関する情報を提供することを目的とし、表示記号及びその使用方法を明確にする体系について規定した。」と規定されています。

  すなわち、最新の取扱表示は「取扱い方の上限」を表しており、表示よりも強い作用や高い温度での洗濯やアイロン掛けは、衣類にダメージを与える可能性があります。

    言い換えれば、表示が示す通りの作用や温度での洗濯やアイロン掛けであれば、衣類にダメージを与えることがないということです。

 禁止記号について

 「取扱表示」が、回復不可能な損傷を起こさない最も厳しい処理・操作に関する情報を提供するような「上限表示」になった理由は、アパレル品において洗濯処理による変化を恐れ「過保護な表示」を行うメーカーがあったことも要因の一つです。

   例えば、これまではTシャツやドレスシャツ、スウェットなど水洗いが一般的である品物に対して、「水洗い×」「ドライ可」という表示が存在しました。

   装飾品やプリントに何らかの影響を及ぼすことが事前の試験で分かっており「水洗い×」にしたのであれば問題ありません。しかし、試験がされず、消費者による家庭洗濯での不具合を考慮し、クレームになることを恐れて「水洗い×」の表示をしたのであれば、消費者保護というより自社保身の為の表示と思われます。「水洗い×」にした明確な根拠が求められ、根拠が示せないのであれば不適切な表示です。(※参照:東京都クリーニング生活衛生同業組合)

   JISでは、取扱いに関する表示記号又は付記用語で示した事項は、信頼性のある根拠(試験結果,素材の特性、過去の不具合実績など)による裏付けをもつことが望ましいとしています。

  表示者が、×印を付けて洗濯不可の表示をした場合には、表示者は、洗濯によって不具合が起こることの根拠を保持していることが望まれます。

( JIS L 0001:2014 繊維製品の取扱いに関する表示記号及びその表示方法)

禁止の根拠が必用な取扱表示

 乾燥処理の記号への対応

  この表示は、「洗濯処理後のタンブル乾燥処理はできない。」ことを表していますが、ここでの「洗濯」は、家庭洗濯での水洗いを指し、「商業クリーニングにおけるタンブル乾燥処理には適用しない。」としています。

  以下のように、が併記されている場合、家庭洗濯でのタンブラ乾燥は禁止でも、ドライクリーニングでのタンブル乾燥は可能であることを表します。

・洗濯(家庭洗濯での水洗い)処理後のタンブル乾燥処理はできない。

・石油系溶剤又はデカメチルペンタシクロシロキサンによる弱いドライクリーニングができるドライクリーニング処理は,タンブル乾燥を含む。

・洗濯(家庭洗濯での水洗い)処理後のタンブル乾燥処理はできない。

・パークロロエチレン又はジブトキメシメタン若しくは石油系溶剤又はデカメチルペンタシクロシロキサンによる弱いドライクリーニングができるドライクリーニング処理は,タンブル乾燥を含む。)

は、弱いドライクリーニングを意味しています。「弱い」の意味は、①水を添加しない、②洗いの時間を短くする、③乾燥温度を低くすることで、タンブラ乾燥は禁止していません。

JIS L 1931-2及び-3 繊維製品の商業クリーニングによるドライクリーニング試験方法

取扱表示

水の添加

(%owf)

洗い+すすぎ 

時間(分)

乾燥入口温度

(℃)

乾燥出口温度

(℃)

15+5 80±3 60±3
0 10+3 60±3 50±3
15+5 80±3 60±3
10+3 60±3 50±3

 ドライクリーニング溶剤は有機溶剤ですから、揮発性があり、毒性もあります。Ⓟやでは、乾燥終了前にドライクリーニング機械から取り出すことは絶対にありません。Ⓕやも、欧米では乾燥終了まで衣類を取り出すことはありません(日本を除いて)。

 ワイシャツ取扱表示への対応

➀ワイシャツ(綿100%)の取扱表示例と記号の意味

・液温は、40℃を限度とし、洗濯機で弱い洗濯処理ができる。

・酸素系漂白剤による漂白処理ができるが、塩素系漂白剤による漂白処理はできない。

・洗濯処理後のタンブル乾燥処理ができる。排気温度の上限は最高60℃の低温乾燥。

・つり干し乾燥がよい。

・底面温度160℃を限度としてアイロン仕上げ処理ができる。

・石油系溶剤又はデカメチルペ ンタシクロシロキサンによる弱いドライクリーニングができる。

➁ワイシャツ(ポリエステル65%、綿35%)の取扱表示例と記号の意味

・液温は、30℃を限度とし、洗濯機で弱い洗濯処理ができる。

・漂白処理はできない。

・洗濯処理後のタンブル乾燥処理はできない。

・日陰でのつり干し乾燥がよい。

・底面温度160℃を限度としてアイロン仕上げ処理ができる。

・ドライクリーニング処理ができない。

・非常に弱いウエットクリーニング処理ができる。

 ただし、ワイシャツのランドリーは取扱表示規格の適用外であり、取扱表示の洗濯温度が低温であっても、厚生省環境衛生局長通知に基づき、高温(60℃以上)で洗濯処理します。

 また、漂白禁止の取扱表示であっても、ランドリーでは一般細菌の殺菌や、漂白の目的で酸素系漂白剤を使用し、漂白剤の効果を得るために60℃程度の温水で処理します。

①     JIS L 0001:2014 繊維製品の取扱いに関する表示記号及びその表示方法

・  この規格は,家庭洗濯(洗濯,漂白,乾燥及びアイロン仕上げ)及びドライクリーニング並びにウエットクリーニング(以下,商業クリーニングという。)による繊維製品のケア(取扱方法)に関する表示記号及び表示方法について規定する。(ランドリーは適用外

②    各都道府県知事・各政令市市長・各特別区区長宛 厚生省環境衛生局長通知 

「クリーニング所における衛生管理要領」

・  ランドリー処理の本洗には、60℃以上の温水を使用することが望ましい

以上

無断転載はお断りしております。本記事をご利用の際は、ポニークリーニングへお問い合わせください