欧米のドライクリーニングでは、取扱表示Ⓟに該当する「パーク」や「ソルボンK4(ジブトキシメタン)」、Ⓟ及びⒻに該当する「ハイドロカーボン(高引火点炭化水素)」や「グリンアース(環状シリコーン)」、Ⓦの「ウエットクリーニング」など、様々な溶剤・技術が採用されています。

さらにヨーロッパでは、化学品メーカー数社が独自のドライクリーニング溶剤を開発し、パークの代替を目指しています。新しい溶剤は、さまざまな配合割合の「ハイドロカーボン」と「変性アルコール」又は「グリコールエーテル」 の混合物です。

油性汚れの除去

ドライクリーニング業界では、カウリブタノール値 (Kauri-Butanol value)が溶剤の「樹脂溶解力」を表す数値として使われ、「KB値」と略称されています。

※1 ASTM規格:米国試験材料協会 (ASTM International) が制定する、材料、製品、システムに関する技術的基準

KB値の大きい溶剤は、樹脂溶解力が大きく、油性の汚れを簡単に溶かすことができます。既存のドライクリーニング溶剤でも、KB値が取扱表示に反映しています。

 既存のドライクリーニング溶剤のKB値

ヨーロッパの新規溶剤

ヨーロッパの新しい溶剤は、HiGloIntenseKtexArcacleanSENSENEです。いずれの溶剤も、ハイドロカーボンにアルコール類の溶剤を添加してKB値を大きくしています。

HiGloIntenseKtex は、グリコールエーテル※2を配合した強化ハイドロカーボン溶剤で、配合割合が異なります。マルチタイプ機※3の使用が可能で、洗浄試験での性能はハイドロカーボン以上、パーク以下です。                        

※2グリコールエーテル:分子内にエーテル基(R-O-R`)、水酸基(-OH)があり、水や有機溶剤を溶解する

※3マルチタイプ機(多種類の溶剤兼用機):ハイドロカーボンのDF-2000やEcoSolv、新たに取扱表示に加えられたGreen EarthやSOLVON K4、さらにIntense、Higlo、Ktex、SENSENSの新規溶剤等、多種類の溶剤が使用可能なドライクリーニング機

Arcacleanは、数種類のグリコールエーテル溶剤と約2~3%の水との混合物で、人体や環境に有害とならない溶剤として開発されました。洗浄試験での性能はパークと同等です。

SENSENEは、変性アルコール※4をベースにしたドライクリーニング溶剤で、マルチタイプ機で使用可能です。洗浄試験での性能はパークよりも優れています。

※4変性アルコール:飲食用に転用することを防ぐために、変性剤を添加したエタノール

新しいドライクリーニング溶剤の特性(CINET SolvetexV)

HiGloIntense、Ktexは、「ハイドロカーボン」が多い組成

Arcacleanは、「グリコールエーテル」が多い組成 

SENSENSは、「変性アルコール」が多い組成

まとめ

ヨーロッパで開発された新しい溶剤は、ハイドロカーボンやグリコールエーテル、変性アルコールをベースにした混合溶剤で、水溶性汚れも除去できます。いずれもハイドロカーボンよりもKB値が大きく設計され、取扱表示Ⓟに匹敵するような、より大きな洗浄力の溶剤で、パークの代替品となることが期待されています。

しかし、アルコール、グリコールエーテルなどの溶剤はカウリ樹脂を容易に溶解し、ほとんど濁度を形成しません。そのため、KB値は大きな値を示しますが、それだけでは洗浄性能を簡単に評価できないことが注意点です。

参考資料:CINET (プロフェッショナル繊維ケアの国際委員会) Solvetex IV

以上

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