【研究室コラム】クリーニング展示会(ドイツ編)
毎年、各国(フランス・パリ、中国・上海、イタリア・ミラノなど)でクリーニングに関する展示会が各地で開催されていますが、規模的にも、歴史的にも有名なのは、ドイツ・フランクフルトの「Texcare International」とアメリカの「The Clean Show」です。
ドイツ・フランクフルトの「Texcare International」
「Texcare International」(以下、テックスケア・インターナショナルと称す)は、4年に一度ドイツ・Messe Frankfurt(フランクフルト国際見本市会場)で開催され、世界中の洗濯(ランドリーやリネンサプライなど、水系の洗い)、ドライクリーニング、テキスタイルサービス業界が集まるイベントです。
直近の「テックスケア・インターナショナル2024」は、2024年11月6日から9日にかけて開催されました。4年ごとに開かれる同展示会ですが、前回の2020年は新型コロナウイルスの影響により中止となり、2016年以来8年ぶりの開催となりました。32か国から305社が出展し、122か国から約15,500人がフランクフルトを訪れました。

© Messe Frankfurt Exhibition GmbH
「テックスケア・インターナショナル2024」では、ランドリー・リネン関連のブースがおよそ80%を占め、ドライクリーニング関連は20%程度でした。イタリアからUnion、Firbimatic、Ilsa、Renzacciなどの大手のドライ機は出展されましたが、他のメーカーの出展が少なく、新しい技術やソリューションの発表もほとんどありませんでした。一方で水系の洗濯機メーカー、洗剤メーカーの出展は今まで通りで、ドライクリーニングの衰退が感じられました。(㈱三幸社 クリーニング紀行より)
以下に、「テックスケア・インターナショナル」で展示されたパーク機の台数の推移を示します。パーク機の展示台数の減少と、対照的な炭化水素機の増加が解ります。
20250926-2-300x166.jpg)
パーク機展示の減少(三菱重工産業機器販売、他)
以下に、「テックスケア・インターナショナル」の展示内容の変遷を示します。
ドイツ「Texcare International」展示会の要旨
| Texcare
International 2000 |
・ドイツではパーク機が主流だが、1995年の環境規制対応でパーク機の更新終了、新規パーク機の需要はほとんどなく、代替溶剤は高引火点炭化水素
・液化炭酸ガス機:Electrolux社、上海SailStar社、CHART社が出展 ・Green Earth、Rynexが市民権確保運動中 ・ドイツメーカー:中欧、米国向けのパーク機と炭化水素機100~200台 ・イタリアメーカー:全世界輸出5000台、ドイツ向け80台 |
| Texcare
International 2004 |
・パーク機と炭化水素機(高引火点のホット機で、マルチタイプ)が当面主体
・パーク復権:欧州業界は、パークの世界的な消費量減少で、寿命が延びると予測 ・フッ素系代替のマイルド洗浄は、炭化水素(高引火点のホットタイプ)が定着 ・アメリカの展示会で脚光の、GreenEarth、Rynex、液化二酸化炭素機の展示なし |
| Texcare
International 2008 |
・ドイツでは、土壌汚染・地下水汚染問題はほとんど解決
・パーク:カリフォルニアで2023年以降禁止、ドイツは70%に増加(4年前は60%) ・高引火点炭化水素はパークの代替、他の代替技術の評価は(安全性、洗浄性、経済性の観点から)×Green Earth(シリコーン)×LCO2(液化二酸化炭素)×Rynex(グリコールエーテル)×n-プロピルブロマイド △ウエットクリーニング |
| Texcare
International 2012 |
・ドライ機の台数も溶剤の種類も減少し、出展ドライ機の大半は、炭化水素機、炭化水素とシリコーン兼用のマルチタイプ
・Renzacci、Union、Firbimatic、EazyCleanなど出展 |
| Texcare
International 2016 |
・水洗機(ウエットクリーニングを含む)やリネンサプライ関係の展示が大幅に拡大、展示の5割の面積を占める
・ドライクリーニング機械メーカー13社が出展、パーク機減少(5台)、ドライ機の大半は炭化水素とシリコーン等に対応のマルチタイプ ・代替溶剤のGreen Earth、SOLVON K4以外に、SENSENE、Intense、HGLO等の炭化水素・エチレングリコール混合溶剤が展示 |
| Texcare
International 2024 |
・ランドリー(ウエットクリーニングを含む)・リネン関連のブースが80%、ドライクリーニング関連は20%、ドライクリーニングが衰退
・イタリアからUnion、Firbimatic、Ilsa、Renzacciなどが出展 |
| Texcare
International 2028 |
2028年11月8日~11日開催予定 |
(業界紙、全ク連情報誌、ほか引用)
ドイツ・フランクフルトの「テックスケア・インターナショナル」の展示内容からは、パークの復権と衰退、高引火点炭化水素機の伸展、新溶剤の浮沈、ドライクリーニングの衰退、水系の普及などが見られますが、クリーニング業界がトライ&エラーで挑戦する姿もうかがえます。
日本では100年ほど前にアメリカで開発され、欧米では全廃となった引火点の低い石油系溶剤(ストッダードソルベント)が主流(約91%)で、しかもコールド機が主力(約95%)です。(厚労省 令和6年度ドライクリーニングにおける溶剤の使用管理状況等に関する調査)。
ドライ溶剤、ドライ機の分野で日本は欧米に大きく遅れ、「発展途上国」状態ではないでしょうか。
日独米の石油・炭化水素溶剤の比較
| 項 目 | 日 本 | ドイツ | アメリカ |
| 分 類 | 石油系溶剤(ストッダードソルベント) | 炭化水素 | 炭化水素 |
| 商品名 | ニューソルDX ハイソフト |
TotalTDC2000 | DF-2000 |
| 組 成 | C8~C16 | C11~C15 | C11~C15 |
| 沸点(℃) | 157-204 | 180-196 | 191-205 |
| 引火点(℃) | 43 | 62 | 63.9 |
以上
無断転載はお断りしております。本記事をご利用の際は、ポニークリーニングへお問い合わせください。



