ドイツ・フランクフルトの展示会Texcare Internationalは4年に一度、ドイツ・Messe Frankfurt(フランクフルト国際見本市会場)だけで開催されていますが、アメリカの「The Clean Show」は2年ごとに複数の州を持ち回りで開催され、50年近い歴史のある北米最大の展示会です。

アメリカの「The Clean Show」

 「The Clean Show」(以下、クリーンショーと略す)が誕生する前は、代理店やメーカーが毎年いくつかのショーに出展していましたが、多くの費用と時間がかかりました。1970年代半ば、3つの業界団体がランドリー・ドライクリーニング・テキスタイルケアの業界全体を網羅する展示会を、隔年開催の1つのショーに統合することを検討し、1977年にさらに3つのスポンサーが加わり、「クリーンショー」として確立されました。

 「クリーンショー」の最初の2回は、ブルースの発祥地「イリノイ州シカゴ」で、その後、カジノで有名な「ネバダ州ラスベガス」、ジャズの発祥地「ルイジアナ州ニューオーリンズ」、コカ・コーラの発祥の地「ジョージア州アトランタ」、世界一のテーマパーク都市「フロリダ州オーランド」、アメリカで4番目に大きな「テキサス州のダラス」など、持ち回りで開催されています。Forty Years of Clean: History of The Clean Showより抜粋)

 「クリーンショー」では当初からドライ機、特に塩素系溶剤のパーク機の展示が数多くされていました。しかし、ジョージア州アトランタで開催の「クリーンショー2015」では、リネンサプライ関係の連続洗濯機やフォルダーなどの展示が多く、ホームクリーニング関係は縮小し、パーク機の展示はついにゼロになってしまいました。

 以下に、「クリーンショー」で展示されたパーク機の台数の推移を示します。パーク機の著しい衰退が解ります。

パーク機展示の減少(三菱重工産業機器販売、他)

 パーク機に替わり展示されたのは炭化水素機、特に数種の溶剤に対応できるマルチタイプ機です。ドライクリーニング溶剤は、DF-2000、EcoSolv(以上、炭化水素)、GreenEarth(シリコーン)、GenX(グリコールエーテル系)等が紹介されました。

マルチタイプ機には使用可能な溶剤のステッカーが掲示

 以下に、「クリーンショー」の展示内容の変遷を示します。

アメリカ「The Clean Show」の変遷と要旨

The Clean Show 1999

オーランド

パーク機が主流(完全密閉式の第5世代機)、液化炭酸ガス機実用化

代替溶剤は高引火点の石油系溶剤(炭化水素と呼称)が浸透

・Rynex(グリコールエーテル系)、GreenEarth(環状シリコーン)初登場

・イタリア「バッシーグループ(Union、Firbimatic、RealStar)」は2000    台、ドイツBÖWEは850台の販売実績

 

The Clean Show 2001

ニューオーリンズ

・代替溶剤は高引火点炭化水素DF2000がトップ、GreenEarth急成長

・新溶剤は、PureDry(高引火点炭化水素)、コメゾール(n-プロピルブロ       マイド)、PureGreen(シリコーン)

The Clean Show 2003

ラスベガス

パーク機が主流、炭化水素は高引火点のDF2000

マルチタイプ機が流行(高引火点炭化水素・GreenEarth・Rynex)

The Clean Show 2005

オーランド

パーク機とマルチタイプ機(DF2000、GreenEarth、Impress)展示

・液化炭酸ガス機はセールスター社のみ

・新溶剤:Impress(プロピレングリコールエーテルベース)

・GreenEarthは米国で500台、欧州・日本などで500台が稼動

The Clean Show 2007

ラスベガス

高引火点炭化水素機が圧倒的7~8割、溶剤はDF2000が圧倒的シェア

・液化炭酸ガス機:SailStar社の出展が全く目立たず、終った感

・新溶剤:DrySolv、n-プロピルブロマイド

The Clean Show 2009

ニューオーリンズ

・ドライ機はイタリア製が主流、液化炭酸ガスドライ機は展示なし

・UNIONは11台のドライ機を展示、溶剤は高引火点炭化水素とGreenEarth

The Clean Show 2011

ラスベガス

・カリフォルニアのパーク禁止などの影響で、水洗いが半分に

・溶剤はSOLVON K4、GreenEarth、Rynex、炭化水素を推奨

The Clean Show 2009

ニューオーリンズ

・パークの使用禁止情報により、パーク機の展示はほとんどなく、炭化水素機が大部分を占め、ホームクリーニングの出展は縮小傾向

・シリコーン、高引火点炭化水素(DF2000)、SolvonK4対応機

The Clean Show 2015

アトランタ

パーク機の展示は全くない

炭化水素機はすべてマルチタイプ機、対象溶剤は高引火点炭化水素(DF-2000、EcoSolv)、GreenEarth、Solvon K4、GenXの4種

The Clean Show 2017

ラスベガス

・クリーンショー40周年
The Clean Show 2019

ニューオーリンズ

・ランドリー系の展示が2/3、ドライクリーニング系が1/3の展示
The Clean Show 2022
アトランタ
・ランドリー系の展示が多く、ドライクリーニング系の展示は極少
The Clean Show 2025

オーランド

EPA(アメリカ合衆国環境保護庁)、ドライクリーニングでのパークの使用を10年間段階的に廃止することを設定
The Clean Show 2027

ラスベガス

・7月15日から18日までネバダ州ラスベガスで開催

(業界紙、全ク連情報誌、他引用)

 アメリカの「クリーンショー」では、パーク機からマルチタイプ機への変遷、高引火点炭化水素「DF-2000」の健闘、新規溶剤「GreenEarth」「SolvonK4」の躍進、「Rynex」「n-プロピルブロマイド」「液化炭酸ガス」など新溶剤・新技術の登場と撤退、さらにドライクリーニングの衰退などが見られますが、クリーニング業界がトライ&エラーで果敢に挑戦する姿でもあります。

 ドイツ、アメリカの展示会に反映し、業界でのパークの占有率は減少し、ドイツではウエットクリーニングが代替技術としてドライクリーニングの一画を占め、アメリカでは代替溶剤(GreenEarth、Solvon K4)が健闘しています。

 CINET(国際テキスタイルケア連合会) Dry Cleaning and Laundry Institute International

 日本では100年ほど前にアメリカで開発され、欧米では全廃となった低引火点の石油系溶剤(ストッダードソルベント)が主流(約91%)で、しかもコールド機が主力(約95%)です。

 日本では、現状の低引火点の石油系溶剤が今後も継続使用されていくのでしょうか?

厚労省令和6年度ドライクリーニングにおける溶剤の使用管理状況等に関する調査より

以上

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