1  ランドリーとドライクリーニング

 商業クリーニングでは、綿やポリエステル混のワイシャツは「ランドリー」で、毛のスーツは「ドライクリーニング」で処理します。なぜでしょう?

 クリーニングに求められるのは、衣類へのダメージは極力小さく、汚れは十分に落とすことです。そのため、衣類の素材や汚れに合った洗い方を選んでクリーニングします。

【ワイシャツ】ランドリー

【スーツ】ドライクリーニング

ランドリーは、温水や洗剤・助剤(アルカリ剤、漂白剤等)を用いた強い洗いで、様々な汚れの除去に優れています。ただし、親水性繊維(吸水性がある)の綿・麻・毛・絹などは、型崩れや収縮が起こりやすいです。

ドライクリーニングは、水や温水ではなく、石油系や塩素系の溶剤を用いて、衣類の型崩れや収縮、色落ちを防いだ洗いです。生活環境からの油汚れや塵埃を除去することができますが、汗などの水溶性の汚れは落ちにくいです。

【ランドリーワッシャー】 

 

【ドライワッシャー】

2  衣類の汚れ

 生活の中で衣類に付く汚れは、その性質から次のように分類されます。

衣類の汚れの種類

汚れの性質 汚れの種類
水溶性(水に溶ける) 汗、食塩、砂糖、血液、果汁、牛乳
油 性(溶剤注)に溶ける) 皮脂、バター、天ぷら油、機械油、ファンデーション
不溶性(水にも溶剤にも溶けない) 表皮角質、塵埃、土壌、鉄さび、墨汁

注)水を使用しないドライクリーニングで用いられる液体で、石油系や塩素系等の種類がある。

 クリーニング対象品の「ワイシャツ」と「スーツ」では、付着する汚れが異なります。肌着に近い「ワイシャツ」は襟や袖口の頑固な油性の「皮脂汚れ」を、外衣である「スーツ」は表面に付いている不溶性の「塵埃や土壌」を落とすことが求められます。

【ワイシャツ】皮脂汚れ 

【スーツ】塵埃汚れ

         

3 「ワイシャツ」と「スーツ」のクリーニング

 ランドリーとドライクリーニングでは、「落とせる汚れ」や「衣類に対する影響」に違いがあります。付着する汚れの種類と衣類への影響を考慮して、「ワイシャツ」と「スーツ」は次のようにクリーニングします。

綿、ポリエステル混のワイシャツ

 肌着に近いワイシャツは全般的には汚れが少ないですが、襟・袖口には汚れが多く付着しています。汗や皮脂など、身体からの頑固な汚れを落とすために、温水や洗剤・助剤を用い、各種汚れの除去に優れた、強い洗いの「ランドリー」で洗います。仕上げのプレスによって、元の形態に戻します。

ウールのスーツ、コートなどの外衣

 外衣であるスーツは身体からの汚れは少なく、外部からの汚れが表面に付着しています。型崩れや収縮、色落ちを防いで、生活環境からの油汚れや塵埃を落とすため、溶剤を用いた「ドライクリーニング」で洗います。型崩れは少ないですが、仕上げのプレスによって、立体的に仕上げます。


投稿者:ポニークリーニング生産部 技術顧問 高坂 孝一 
1956年生まれ。群馬大学工学部繊維高分子工学科を卒業後、1979年株式会社白洋舍に入社。関連会社の共同リネンサプライ株式会社を経て1983年より白洋舍洗濯科学研究所に所属。2001年より同研究所所長に就任。2021年株式会社白洋舍を退職後、2022年9月よりポニークリーニング生産部の技術顧問に就任。